コロナ禍による渡航制限がなくなったことで3年半ぶりに里帰りをしました。
満席で窮屈な空の旅はコロナ以前に戻っただけなのに、以前よりもかなりしんどく感じました。
(これが老化か…)
実家に帰ると、何故か身動きがとれません。
もしかして、部屋が縮んだかも?
まぁそんなわけはなく、どうやら筋力が衰えたために日常生活のあらゆる動作が難儀になってしまったようです。
ソファーベッドから車イスに乗り移るのも危なっかしく、こりゃイカンと昇降機能付きの介護用椅子をレンタルしましたが、車椅子よりタイヤが小さいためにこんどは隣の部屋に移動するのにも苦労する始末。
実家はバリアフリーのタワマンなのですが、部屋と部屋の境のほんの数ミリの仕切りを乗り越えるのが意外と大変なのでした。
パリで住んでいる公営アパートにはこのような仕切りが全くなく、廊下は車椅子が充分に回れる幅が確保されています。
洗面所もムダに思えるほど広く、エレベーターで地下に降りればそこが駐車場という便利さ。
そのような甘やかされた環境で、コロナによる外出制限の影響もあり3年間引きこもっていたのも衰えに拍車をかけたのでしょう。
じゃあ鍛えればいいじゃん、レッツ・リハビリ!
と、言えれば話は簡単なのですが。
最近になってようやく診断名が判明したこのベスレム型ミオパチーという病はけっこう曲者で。
運動すると本来は血流が増えるべきところ、何らかの理由で酸素がうまく運べず筋肉細胞が破壊されてしまうのだとか(以前に聞いたザックリした説明なので正確ではないかもしれません。実際のメカニズムはまだよく判っていないらしいです。)
とはいえ何らかのリハビリをした方が良いことは確かです。
同じ疾患を持つ母のリハビリを真似してやってみたところ、母の方が関節の可動範囲が広いではありませんか!
う~む、これでは母にアドバイスするどころではありません。
母の様子を見ていると今後自分にも起こるであろうことが予想できます。
若い頃は体重40キロを下回り何を食べても肥らなかった母が、今やビーガンになっても体重が減らないなんて、不思議すぎる……
でも体質って変わることもあるのでしょうね。
取り敢えず眠くなるような食べ物は控えて、少しは運動しなくては。
身体が不自由になっても創意工夫で、母は塔に囚われた女王のように優雅で不自由な暮らしを送っています。
その生活を述べ20人ものヘルパーさんやお医者さん、理学療法士の先生方が支えてくださっています。
しかしあれこれ悩む煩い息子と異なり母は達観しており、離日が近づくにつれ穏やかになってゆくのでした。
以前は出来ていたことがいつの間にか出来なくなる、これが案外コワいんです。
仕方がないと解っていても、歳を取るのがこんなに辛いとは。
けれども考えてみると、程度の差こそあれ私達の誰もが経験して行くことなんですよね。
そういうものだと割り切ってしまえば、実はどうということはないのかもしれませんが。
ハッキリしているのは、今が一番若い、ということ。
もっと後になれば、「あの頃はまだ元気があった」と思い返すことになるのでしょう。
なので、だんだん少なくなる残り時間でせいいっぱい生き、今を楽しまなくては。
かくして4週間のハードな実家リハビリを終え、帰途についたのでした。
ところでいつの間にか長い月日の経ったパリ生活について、
「パリは竜宮城みたいなところなんだよ」って、半分冗談で言い訳にしてきました。
そして今回パリに戻って、明らかに時間の流れるスピードが東京と違うことに改めて気づきました。
もしかしたら、パリではなくて、ぬるま湯のようなこの家が世の流れから取り残された竜宮城なのかもしれません。