23/6/2024

パラリンピックを開催するパリのバリアフリーに思う

3ヶ月ほど前、オリンピック/パラリンピックを迎えるパリ市のバリアフリーに関する取材の依頼がありました。
たいして語れることはないなりに思うところをひと通り下記のメールに書いて返信し、それで済むだろうと思いきや、意外にも直接取材にいらっしゃるとのこと。

そして先日その記事が配信されました。

五輪控えるパリの「不都合な真実」。でこぼこの石畳、階段しかない地下鉄…花の都は「バリアー」だらけ

前半は車いすパラリンピアンの話でいいですね!
後半は、解っていたこととはいえ、改めて取材を受ける難しさを感じました。

記者さんはわざわざ拙宅にいらしてとても丁寧に取材してくださいました。
けれども記事として成立させるための意図や文字数制限などもあり、どうしても日仏比較論的にならざるを得ないようで。
個人的にはことさら日本をネガティヴな引き合いに出したくないですし、パリ市のバリアフリー状況に不満があって下げたい訳でもありません。
とはいえ、わかりやすい批判の方が記事としてのウケはいいのでしょう。

以下はパリ暮らしに慣れすぎてしまったためか、大抵のトラブルには驚きも不満も感じなくなった某日本人によるパリ式バリアフリー観です。
毒にも薬にもならないテキストですがここに供養しておく次第です。


パリ6区に17年、現在はパリ15区に引っ越して6年になります。
車椅子ユーザーですが普段の外出は車を運転するので公共交通機関を利用することはほとんどありません。そのためパラリンピックに向けて市内のアクセス等が改善されているかどうかを実感する機会があまりないのが正直なところです。おそらくいろいろ改善するための工夫や工事をしているとは思いますが。

パリは昔からバリアフリー化は頑張っているのですが、メトロに関してはどうしてもエレベーターを設置することが困難な駅が多いようです。バスは車椅子対応の車両が増えましたが、昇降のための板が日本と異なり電動なため、故障していることもあります。故障していない場合でも、車椅子で乗れるのはせいぜい2人まで、3人以上となると難しそうです。
車椅子にとって最も利用しやすい公共交通機関はトラムですが、カバーしている地域は僅かです。

では自動車で出かけた場合はどうかというと、車椅子用の路駐スペースが空いていて停められればいいのですが、場所が無くて地下駐車場に入る場合は注意が必要です。エレベーターの故障が非常に多いからです。日本では考えられないことですが、1基しかないエレベーターの故障で地上に出られず、為す術なく車に戻り他の駐車場を探さなければならない事態が珍しくありません。

日本では故障したままのエレベーターに出くわすことはまずないですよね。問題があれば直ちに修理されることでしょう。メンテナンスも利用者になるべく影響が及ばないように行われていますね。
昨年久しぶりに東京に里帰りして地下鉄や電車を利用してみたところ、どの駅にもエレベーターがありとても便利だと感じました。もちろんエレベーターはちゃんと動きますし、もし間違えてエレベーターのない出口に向かおうとすると駅員さんがどこからともなく飛んできて教えてくれるので、注意を払ってくれていることがわかります。
日本のサービスは限りなく完璧に近い状態で維持・提供されており、それを責任を持って支えてくれているのは主に現場の職員さん、そして保守整備に携わる業者さん達です。

実はフランスは日本のような完璧なサービスの提供は目指していないのかもしれません。頑張ってはいるけれど、完璧でなくてもいい、と。もちろん故障はないに越したことはありませんし、壊れたらすぐに直して欲しい。けれども「まぁそんなもんだよね」という諦観にも似た落ち着きが利用者側にもある気がするのです。それに、常に完璧を維持するためには誰かが無理をすることになる。この、過度な無理をせずに自然体で何とかするのが、パリ式なのでしょう。

では何がパリのバリアフリーを支えているのか?というと、それは市井の人々です。15区はベッドタウンで障害者対応の公営住宅も多いので車椅子や白杖の人を見かけることが珍しくありません。誰かが困っているとパリの人々は気さくに声をかけます。もちろん困っている様子がなければ無闇にお節介はしませんが、もし助けを求めれば必ず誰かが手を貸してくれるでしょう。

パラリンピックの開催でパリがどのように変わるのか、または変わらないのか、まだハッキリとは見えてきません。ですが例え完璧ではなくても、パリはあらゆる人々を迎える準備をしています。そして成功や失敗を通じて得られた知見が今後に活かされていくことでしょう。
選手として、観客として、パリを訪れる障害を持つ人々もパリを楽しんでくれるといいな、と願っています。そしてパリでのバリアフリー体験を通じて日本の素晴らしさを再発見するのもまた一興ではないでしょうか。
2024/03/10


Comments (1) パリ Tags: — Kyo ICHIDA @ 2024/06/23 03:40

One Response to “パラリンピックを開催するパリのバリアフリーに思う”

  1. MORI 21/7/2024 at 8:15 AM

    読ませていただきました。
    感慨深いと言うか、やっぱりな。と言うか。。
    確かにハード面や現場の人々のホスタビリティは責任の伴う
    【仕事】として機能してますが、日本人個々の人としてはどうなんだろう。
    と思っていました。けど、
    最近の若いもんは、その辺も出来てる気がする。
    未来は明るい!と勝手に思っています。笑

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