19/10/2019

イラストレーター朝倉真理さんに学んだプロの生き様

三週間ほど前、イラストレーターの朝倉真理さんからいつもと変わらない文体で思いやりのあるメッセージをいただきました。
そこには癌で余命が1ヶ月を切っている宣告を受けたことが明るい調子で書かれていました。

ハンマーで殴られたようなショックでしたが、いやいや、ショックを受けているのは真理さんだと気を取り直しました。

ホスピスで延命し、復帰し、最大の「脅かすなよ」をかます予定です(笑)

そのような大変な状況の中、絵の受け渡しを心配してくださったのでした。

今年の4月、愛猫の誕生日に投稿した写真を見た真理さんが、絵に描きたいと申し出てくださったのです。

とても光栄だしどんなに嬉しかったことか!
そしてすぐに絵を買わせてくださいとメッセージしました。

真理さんと僕は面識がありません。

共通の友人のSNS投稿を通じてお顔とご活躍は知っていました。
とても優しそうな方で、その後SNSで交流させていただくようになり、おとなになってからでも友達ができることを喜びました。

後で知ったのですが、真理さんのお母様と僕の母は御茶ノ水の文化学院で同級生だったというご縁もありました。
真理さんはうちの母と僕の距離感をご自身の息子さんたちとの関係と似ていると、微笑ましく近しい気持ちで眺めていてくださったそうです。
そして次回帰国したときにルルちゃんの絵を直接お目にかかって受け取れる機会をお互いに楽しみにしていました。

けれども昨年大きな手術を受けたことも、その後転移した癌を抑える抗がん治療を一年続けてきたことも全く知りませんでした。
辛いことやネガティブなことは噯にも一切出さず、いつも素敵な絵をたくさん描いて投稿してくれていた真理さん。
ネットだけでのやり取りですが、もの凄く感じの良い方なんですよね。
SNS感じの良い人選手権とかあったら間違いなく優勝です(当社比)

息子さんの奔走のおかげで一番転院したかったという緩和ケア専門の病院に転院した真理さんは、なんと病床でも仕事の絵を描き上げられたそうで!
「病床でまで仕事するなんて」という人もいるかもしれませんが、違うんです。
彼女は絵を描くことを本当に愛していたんだと思います。
本当にプロフェッショナルだし、余命宣告にも決して取り乱すことなくポジティブで、ご自身が誰よりも不安なはずなのに常に気遣いの心を持ち続けて。

なんて凄い、なんて素敵な人なんだろう。

人生も後半になって、僕も終わりのことを意識するようになっていました。
そんな折、真理さんの最期を迎えるにあたっての立派な姿勢に、自分もかくありたいと思ったんです。見習いたい、と。

立派に息子さんたちを育て上げられ、プロの絵描きとして人生を生ききった朝倉真理さん。

叶うことなら、ご本人が信じていたように回復を遂げて計画通り嬉しいサプライズをかましていただき、
そしてパリで実物のルルちゃんにも会ってやって欲しかったです。
この街にはきっと真理さんが描きたくなるものが結構あったと思うので。

ルルちゃんを描いてくださって本当に有り難うございました。
忘れません。

  

Comments (0) 追悼文 アート Tags: — Kyo ICHIDA @ 2019/10/19 20:21