12/3/1997

気がつくとタイル張りの薄暗い部屋で身動きできなくなっていた。周りを取り囲む無数の機械装置の規則的なノイズとはうらはらに、そこはあらゆる意思が希薄な場所で酸素さえも不足気味だった。視線が届く範囲で辺りを見回すと他にも二~三人仲間がいるようだったが、コミュニケーションの手段はない。やがて誰かの身体に繋がれた機械が変調を訴える信号を発して、ひと気の無かったその部屋が束の間慌ただしくなりその身体はどこかへ運び出されていった。数時間後に戻ってきた時は、それは別の身体になっている。そしてそれが数日の間何度も繰り返された。
そこは眠ることができない場所だった。ほとんど “Nessun dorma” の世界だ。
何年も後で課題や仕事に追われてずいぶん徹夜もしたけど、その時ほど眠れなかったことはなかった。(救急救命センターにて)

  

Comments (0) その他 Tags: — Kyo ICHIDA @ 1997/03/12 13:17