出発まで

誕生日の前日、Samさんの秘書のT嬢から Internet World 2000 と NAB を視察する Sam's Tour への具体的な日程が書かれたお誘いのメールをいただいたときは正直びっくりした。 Sam's Tour とはSamさんこと古川享さんが毎年 NAB や SIGGRAPH 等の視察に全くの私費で仲間達を招いてくださる旅のこと。
ネットの不思議なご縁でSamさんとお仲間の集まりに参加させていただくようになった頃から誘っていただいていたものの、高木さんの日記を愛読していた僕は足手まといになるのが必至なので辞退していた。 というのもここ数年で僕の体力はかなり低下していて自信がなかったし、僕としては時々の集まりに出かけていって食事しながらお話を聞いたりするだけで充分満足だったからだ。
けれどもSamさんは僕のハンディキャップを承知の上であることはもちろん、僕のパートナーでありボディガードであるわびすけまでまるで当然の事のように一緒に誘ってくださっている。
僕達は一度もアメリカへ行ったことがなかった。こんな機会でもいただかなければ行けないのは明らかだ。熟考の末、参加させていただくことにした。

日程は9日間。まず4月5日に成田を発ちL.A.へ。ここで Internet World 2000 を見学して4月9日にラスベガスへ移動、NAB(National Associations of Broadcasters:全米放送者連盟)のコンベンションを視察して13日に帰国の途につく、というもの。まずは高木さんの日記の Internet World 99・NAB 編を再読。むむむ、やはりこれはたいへんなことになってきたぞと実感。この時点で出発まで一週間とちょっと、まず何はともあれ仕事の区切りをつけておかねば。
幸いクライアントの理解も得られ、旅の期間中はスケジュールを空けることができた。それでも不測の事態に備え重いPowerBookを持っていくことはやはり避けられない。データのバックアップをCD-ROMに焼きまくり、更に普段作業に使っているMacのファイル共有をTCP/IP経由からでも可能に変更。註1 これで「あのファイルを忘れた!」となる心配もなし。また、当然ながらメールのやりとり等のため海外で使えるプロバイダに加入する必要もある。東京でもパリでも専用線だったので米国内でのモデムを使ったアクセスを前提にして新規にプロバイダを探した結果、アクセスポイント数で無難なAOLにした。註2
今の僕はもう十年ちょっと前にパリに留学していた頃のようには歩き廻れないので、旅には車椅子が必須。98年にルーヴル美術館のヴァーチャル・ツアー制作で出張したときのためにOX註3で作ってもらった総重量9Kgの車椅子が久々の出番となった。よくアメリカは車椅子でも暮らしやすいと聞くし、乙武洋匡さんでお馴染みのバリアフリーレポート状態で見てこよう。
次は空港への交通手段。出発前日にスーツケースを宅配業者に預けて空港で受け取りそのままチェックイン、というのがオーソドックスなパターンだけど、今回は10日足らずなので荷物は少ない。成田空港のウェブサイトをチェックしてみたところ障害者手帳を提示すれば駐車料金が半額になるという。意外なことにこれは箱崎からリムジンバスで2人が往復する代金より安いぞ。今までは3ヶ月以上の旅ばかりだったので空港に車を停めっぱなしにする選択肢を検討していなかったんだけど、タクシーに車椅子を積み込んだりバスに乗ったりするよりも自分の車で行く方がはるかに楽だ。これでだいぶ気が楽になったと喜んでいたらぱとら(僕の母:Samさんと知り合えるきっかけは偶然に彼女が作ってくれた)が 「空港の駐車場に何日も停めてたら外車は必ず盗まれるわよ」と宣う。
マジか?成田の駐車場はそんなにヤバいとこだったのか?さっそく成田空港に電話。
「どこからそんな話をお聞きになったか知りませんが、少なくとも私が勤めている間そういうことは一度もないですよ」と年輩な声の駐車場職員さんに笑われる。な〜んだ。
ノースウェストはお馴染みの第1エアターミナル、ハンディキャップトパーキングは北ウィングの端から出てすぐの場所にあるので帰ってきたときにも楽。

これで準備はほぼ終了と安心するもつかの間、それまでの過密スケジュールがたたってわびすけが風邪をひいてしまった。病院で点滴をしてもらい、出発まで2日間安静に・・・と思ったら、なんと宮崎県延岡市に住むわびすけのお祖父さんの訃報が!
この時点で出発まで約36時間、深夜のためネットで出発前日朝一の便を予約し急遽日帰りで九州へ飛ぶわびすけ。大好きだった90歳のお祖父さんの最期は聞けば聞くほど見事な大往生だった。無事にお別れをし、親類から行ってらっしゃいと送りだされて戻ってきたわびすけはさすがに風邪をこじらせていたが、考えようによっては出発前にちゃんとお別れができて良かったと思う。 そしてあわただしく出発の朝を迎えた。

あいにくの雨。フライトは午後3時半、午後1時15分の成田待ち合わせには早かったけれど家に居ても落ち着かないので9時前に出た。あっちで車を運転する予定はないものの備えあれば憂いなし、一応国際免許を取りに江東試験場へ。江東試験場はうちから成田へ向かうちょうど途中にあり、なにしろいつも空いているのでいい。5分とかからず手続き終了。のんびり成田を目指すも11時には着いてしまった。駐車場でしばし待機、雨脚が弱まってから車外へ。車はここで数日留守番。
出発ロビーにて両替え等を済ませ出発ロビーで待っているとT嬢より電話が。ロドさんが少し遅れるとのこと。今回ご一緒させていただくのはSamさんはじめ、元軍人のロドさんことロドリゲス櫻井氏、無差別級河合ガモンこと舟橋氏。屈強の重量級メンバー編成で心強いことこのうえなし。仕事のご都合で舟橋氏は9日のラスベガス行き飛行機で合流予定。
そうこうするうちロドさん登場。ほどなくしてSamさんも。お二人とも「こんなに余裕を持って空港に着いたのは久しぶり」だそうだ。しばし「フライトぎりぎりに空港に駆け込んで怒られた話」などで盛り上がる。
車椅子でチェックインすると通常空港の職員の方もしくは航空会社の方が案内してくれるので出国手続き等スムースでいいのだけど、ずんずん押されて行っちゃうので免税店とかに寄っている暇はなくゲートに着く。そのせいか?免税品ってあんまり買ったことがない。
飛行機のドアのところで車椅子を降りて預けるんだけど、可能なときは客室内の荷物スペースに置かせてもらう。貨物室送りになると気圧の関係でタイヤの空気を抜かれちゃうことがあるからだ。このため一昨年パリで自転車屋さんを探すはめになったっけ。
ロサンゼルスまでは約9時間弱のフライト。ヨーロッパよりはだいぶ近く思える。ロドさんは3日前にロンドンから戻られたばかりなので時差がどうなっちゃうんだろうか。僕は飛行機に乗ると眠くなる体質なので離陸前からうつらうつらしてしまう。バタバタしたここ数日の睡眠不足を取りかえすように眠った。

註1 MacOS 9 から可能.セキュリティーは??.
註2 話の本筋とは関係ないけどMacOS 9 + AOL4.0 の組み合わせでダイアルアップ接続した場合、うまくTCP/IPが通らないことがあるのでついでに解決方法をここで.
1. AOLでダイアルアップ接続する
2. コントロールパネル→TCP/IPを開く
3. "AOL Enhanced"が選択されているのでこれを"PPP"に変更、保存して閉じる
4. 再びコントロールパネル→TCP/IPを開く
5. "AOL Enhanced"に戻し「BootPサーバを参照」を選択、保存して閉じる
実際BUSYは一度もなかったものの、この行程は何度も繰り返すはめになった.
註3 聞くところによるとこのメーカーの社長さんは元ライダーで、事故のため車椅子を使わねばならなくなったときそのデザインの悪さに愕然として自らのバイク工場で車椅子を製作するようになったのだそうだ.
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