オペラ座・間一髪?!

先日、日本からやってきた知人夫婦とパリ・オペラ座ガルニエにバレエを観に行く 機会がありました。
なるべく良い席をというリクエストだったのでネットで予約し、
わびすけもバレエが大好きなので僕達もちょっとだけおめかしして出かけること にしたのです。

余裕をもって開演40分前に着いたのですが、待ち合わせた知人夫婦に チケットを渡した後、係員に教えてもらった方へ行っても ハンディキャップ用の入り口がなかなか見つかりません。
実は事前にインフォメーションに何度も電話してみたのですが 全く繋がらなかったのです。
遅れて迷惑になるのは避けたいところなので、わびすけがオペラ座を 一周する勢いで探して呼び鈴押しまくりで人に聞き、
やっと見つけたときには開演15分前を切っていました。
見つかりにくいのも道理でした。
大きな階段にいつも大勢の観光客が座っている正面玄関から見るとちょうど真裏、
出演者や関係者の出入り口から車いすも入るようになっていたのです!

「係の者が案内に参りますのでそちらでお待ち下さい」
何はともあれ間に合って良かった!と安心したのも束の間、係の方が息せき切って やっと来てくれたときには開演5分前になっていました。

オペラ座のバックステージから客席への通路には 5〜10段くらいの階段が何箇所かあり、スロープがあるのですが 設置スペースが限られているためかなりの急勾配、押す人には大変です。
それにオペラ座だけあって彼の制服も 蝶ネクタイに黒の上着なので暑いに違いありません。
登るとき車いすを押してくれる彼の背中をわびすけも押して手伝います。
わびすけによると急な坂を一気に登るときは 背中を押してもらうと助かるのだそうです。なるほど。

途中すれ違った紳士が時計を見て「急いだ方がいいよ」と彼に言いました。
彼が小声で(今のはおっかない上司)と教えてくれます。

「お席はハンディキャップ用のバルコニーですか?」
「オーケストラ席です」
「オーケストラ席!」

押してくれながら彼は、さてどうしたものかと思案しているようです。

「ハンディキャップ専用の席というのがあるのですか?」
ネットの予約ではそういうカテゴリーがありませんでした。
「ありますがそれほどにはいい場所ではありません。
 おなたの席は超デラックスな位置ですよ」
「アクセスが難しいようでしたらハンディキャップ用の場所でいいですが」
「車いすから降りて歩けますか?」
「少しなら」
「では大丈夫だと思います」
歴史的な建物となればバリアフリーも限界があるのは当然です。
実は16年前に一度ここにオペラを観に来たことがあったのですが、
その頃は松葉杖で歩けたことと後方の席だったため、
この事態を予測できなかったのはうかつでした。
オペラ座の座席は昔ながらのびっしり詰まった配列です。
オーケストラ席は階段のあるトンネルを通った先にあり、
座席と座席の間の通路も非常に狭いため、
自分の席まで行くのは大変と考え階段側の補助席で 観させていただくことにしました。
座席へ案内をしてくれるもぎり嬢にチップをあげる昔ながらの習慣にならい、
丁重にお礼を言ってわびすけがチップを多めにあげました。
座った頃ちょうど演奏が始まり、はぁ〜間に合った〜、と安堵しました。
まだちょっと心臓はばくばくしていましたが、幕が開くと見事な舞台に見とれて 何もかも忘れるようなひとときを過すことができました。
後で聞くとわびすけはシャガールの天井画をはじめとするこの上ない環境での 息を飲むようなバレエに涙が出たそうです。
熱烈なバレエファンである知人も凄く感動しており、
いい席をとった甲斐がありました。

帰りも係の方が出口まで押してくれました。
「今夜の公演は如何でしたか?」
「素晴らしかったですよ、とても満足です。
それに日本ではこんなにいい席は信じられないくらい高いんです」
そう伝えると彼も満足そうに
「近いうちに是非またお越しください」と言ってくれました。

次回は無難に車いす席を予約するか、
近代的なバスティーユのオペラ座にするつもりですが、
ガルニエのオーケストラ席で観れたことはとてもいい思い出になりました!

2004/07/13