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Date: Mon, 08 Jan 1996 18:22:00 +0900
From: "長谷 聡 "
Subject: 年始年末回顧緑(その2)
To: Kyo ICHIDA
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その1を読む)

   第3章 旅立ち

1996年1月1日夕方。
気がつくと、わたしは新幹線の車中の人となっていた。
どこへ行くかって?
もちろん神戸。
しかしあまりにもリスキーな旅であった。
40万というのはあまりにも安すぎる。
秋葉では1Gモデルの英語版ですら、40万以上するのである。
それゆえに、「あっ、すいません8100のまちがいです」なんて言われたひにゃ、
トリプルクロスカウンターどころの騒ぎではない。
あるいは、すでに長蛇の列ができていて私のはいる余地などないかもしれない。

まあいいか。
買えなかったら、日本海でも旅して冬の海に「バカヤロー」とでも叫ぼう。


   第4章 長い1日

1月1日午後9時ごろ神戸着。
ハーバーランドの夜景が美しい。
緊張の足取りでメガパン◯ールへ向かう。

午後10時ごろ。
メガパン◯ールを発見。
そう、わたしは店の場所すら知らなかったのである。
メガパン◯ールはダイエーのテナントの一つだったのである。
ん?ちゅーことは全国のほかのダイエーでも...
いやいや余計なことは考えるのはよそう。
問題は長蛇の列ができているかだ!
おっ、誰も並んでいない!
これで第1の関門は乗り越えた。
しかし、しかし。
並んでいないのは良いとして、いったいわたしはこれからの12時間どうしたら
よいのだろう。
予定では誰か2、3人すでに並んでいて、その人達とワイワイやりながら、夜を
過ごすはずだったのだが。とりあえず、その辺をうろついてみる。
泊まってもよいのだが、うっかり寝坊でもして買いのがしては泣くに泣けない。
だんだん夜が更けてきて冷気が体にしみこんでいく。

午後11時ごろ。
神戸駅前に神社があったので、とりあえず初詣としゃれこんでみる。
おさいせんを投げ、祈りを捧げる。
「無事、8500が購入できますように。」

午前0時ごろ。
行くところもなくなったので、深夜の被災地めぐりでもしてみるか、と思ったが
さすがに3時間も歩き続けて疲れがピークに達して、どこかで眠りたいと思うよ
うになった。公園のベンチに腰掛ける。そして横たわる。
さ、寒い!
ここでは眠れない。
あと10時間。

午前1時ごろ
場所を移動する。
ビルの地下の駐車場が風が当たらなくて過ごしやすそうだ。
ビールを買い込んで、ここで横たわる。
WALK MANのなかにWHITE ALBUMのテープがはいっていた。Cry Baby Cryがやけに
悲しい。
ビール片手にふと思う。
「なぜ新年早々ホームレスにならにゃいかんのだ...」
そう思っているうちに少しうとうとしかけてきた。

午前3時ごろ
少し寝たようだが、やはり寒さで目がさめた。
時計は3時を少し回っているようだ。
あと7時間。
あっ、そうだ。たしか駅の近くに24時間営業のファミレスがあった。
コンビニで雑誌をたくさん買い込んで、ファミレスにはいる。
あったかさに再びウトウトしはじめる。

午前6時ごろ
空が少し明るくなってきた。
めったにコーヒーのおかわりをもってこない◯イヤルホストで4杯もコーヒーを
飲んで しまって腹ががぶがぶである。そろそろでようと思った。
あと4時間。
駅に戻ると地下街が開いていたので、ベンチで再び仮眠をとる。
ようやく峠を超えたような気がした。

午前8時ごろ
街が動き始める。
いよいよ決戦の地、メガパン◯ールへ向かう。店の前で待つ。
やはり誰も並んでいない。掃除のおばちゃんが怪訝そうな表情でこちらを見やる。


午前9時
あと1時間。
すでに心も体もボロボロである。でも誰も並んでいない。

開店30分前。
ちらほらと客が集まってくる。でもいずれも家族ずれ風。
ん?

開店10分前。
だいぶ列ができてきた。その先頭にたっているのはわたし。
ちょっとばかりの優越感。

開店。
扉が開く。
私は走る、走る、走る。
あれ?パソコン売り場はわたし一人。
ほかの客はどこへ行ったのだろう。
よくみると、大方の客はファミコンソフトめあてだったのである。
結果的には、並ぶ必要はなかったのである。
まあ、そんなことはどうでもいい。
問題は8500だ。
本物かどうか。
即座に店員に聞いてみる。
「売り出しのPowerMacは8500ですか?」
「そうです。」
「日本語版ですか?」
「そうです。」

わたしはついに勝利した。

   第5章 苦難は続く

わたしは勝利の美酒に酔いしれた。
そして予定通りの行動をとるべくこういった。

「配達お願い出来ますか?」
「あのぉ、それがまだ宅急便が休みなので、持ち帰りのみなんですよ」

わたしは万里かなたまで吹っ飛んだ。
し、しまった。そこまで考えていなかった。
買ったはいいが、運ぶ手段がないとは。
わたしは途方にくれた。
予定では、荷物は宅急便にまかして、のんびり凱旋旅行と洒落こむつもりだった
のに。
とりあえず、持ちかえることにして、近くの公衆電話で電話帳から宅急便の会社
をてあたりしだいかけまくってみたが、ことごとく、お休み。

ふたたび公園のベンチにたたずんでいるわたしがいた。
ベンチの横には大きな段ボール箱が一つ。
たばこを一服して空を見上げる。
「いい天気だ」

ふたたびわたしは決意した。

「持ちかえる!!」

まずはタクシーを拾って新神戸駅に向かう。
ここからが問題である。
はたして、どうやってこいつを新幹線に載せるか。
とりあえず駅員に聞いてみた。
「これ、新幹線に載せられますかね?」
「んー、大丈夫なんと、ちゃいますか」
頼りない答えである。
なんとか改札は通り抜けた。
新幹線がホームに滑り込む。
うっ、激混みだ。すでに帰省ラッシュは始まっていたのである。
とりあえずデッキにMacをおくことができた。しかし、このまま東京まで行くの
は辛い。
そこで新大阪でいったん降りて新大阪発の電車に乗ることにした。
この作戦は見事に当たった。新大阪発の電車はがらがらだった。
幸いなことに一番後ろの座席と扉の間にちょっとしたスペースがあり、
そこにMacをおくことができたのである。

帰りの富士山はわたしに「よくやったね」とささやいていた。

最後の難関は東京駅についてからタクシーに乗るまでの運搬であった。
もうすでに体はボロボロで重いものは持てない体だったが、 わたしは自分の体にムチ打った。
きっとこの時のわたしを見たら、目が血走った大川栄作が箪笥をかついでいる
ような光景がみれたに違いない。

3歩進んで1分休憩。
このような感じでやっとタクシー乗り場までこぎ着けた。
そして家路へ...

「燃えつきたぜ、真っ白にな...」


   第6章 苦難はまだ続く

家に帰ったら、今までの疲れがうそのように元気が出てきた。
さっそく箱をあける。
さっそくセットアップを始める。
かたわらにはQuadra700が放り出されている。
電源ON
おぉ!!ぼっ暴力的に速い!!

しかしその時わたしは異変に気がついた。
「おっ、音がでない!!!」

うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉx!!!!!!!!!!!

はるばる運んできたPowerMac8500/120は不良品だったのである。

(もうこの辺で書き飽きたのでやめにします)


       終わり


※この作品は実際に長谷氏が体験されたお話しです。


PS:きのうの夜電話を頂いたようですね。
 夢の中で鳴っているのを聞いたような気がします。

ではまた。


#end of message

長谷さんに励ましのお便りを出そう!


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