21/11/2002

ロラン爺さんと猫のマムー

Chat

モンパルナスでよく会う大きな猫を連れたホームレスのロラン爺さん。彼と愛猫マムーは凄く仲がいい。というかお互いをよりどころに都会でひっそり生きて行くふたり…というような暗さは無く、彼にとってマムーは恋人であり守神のようなものでもある。マムーも彼のことばを理解しよく言うことをきく。
挨拶して猫を撫でるのが日課だったのだけど、しばらく見かけない日が続いていた。
2ケ月くらい経った頃、久しぶりにいつもの場所に座っていたのでポケットの小銭を普段よりちょっと多めにかき集めながら挨拶し、少しやつれた彼にどうしたの?と聞くと、
「病気してたんじゃよ」と、いつもの笑顔がちょっとだけ曇った。そして思いがけない提案。
「カメラを持ってたらこんど持ってきてくれんかね、一緒に写真を撮ろう」
翌週の雨の降っていない日にカメラを持ってくることを約束して別れた後、何だか不安になった。ひょっとしたら彼は自分がもうあまりもたないと感じているのでは?それでささやかな存在証明として写真を残したいと思ったのではないか?とか…。老人と老猫、どちらかが先に逝ってしまったら残された方はどうなるんだろう…。
約束の日、いつもと変わらず彼は機嫌がよかった。
「現像したらくれんかね、いつでもいいから」と言うロラン爺さんのことばに、何となくほっとした。

  

Comments (0) パリ Tags: — Kyo ICHIDA @ 2002/11/21 23:35